TCフォーラム/年頭コメント(2025年1月)

<TCフォーラム2025/年頭コメント>

納税者権利憲章(法)案と納税者支援調整官の法定化、そのための議員立法の実現に向けて
石村耕治 (TCフォーラム共同代表)

申告納税制度のもと、税制や税務は簡素で、納税者にわかりやすいものでないといけません。ところが、現実には、毎年改正され、複雑になる一方です。まさに「簡素」は絵に描いた餅です。複雑な税制や煩雑な税務で、一番とばっちりを受けるのが、従業員を雇い、事業を経営する人達(事業者)です。源泉徴収や年末調整、所得税ないしは法人税、消費税などの税務、さらには社会保険関係事務などが過大な負担となっているからです。とりわけ、小規模・零細な事業者には、本業/本来の商い/ビジネスを超えるほどの重荷になっています。

国策として、小規模事業者や農業者、フリーワーカーや高齢者など経済基盤の弱い納税者を大事にし、官民の税務支援を強化する国が増えています。いまや民主主義の価値を大事にする国々では、税務当局が納税者の権利を大事にして税務行政にあたるのが当り前になっています。

これらの諸国の議会や政府は、納税者権利憲章(法)を制定・公表しています。税務当局が、納税者の権利を大事にする、納税者を「権利の主人公」扱いをする方針を公けにアナウンスするためです。加えて、納税者の苦情を聴く大きな耳を持った独立した機関(苦情処理機関/駆け込み救済機関/オンブズパースン)を設けています。

ところが、わが国では、いまだ税務当局が、納税者を「義務の主人公」のような扱いを続けています。納税者を「権利の主人公」 扱いしようとしていないわけです。こうした状況を変えるには、議会(国会)・政府が公けにした納税者権利憲章(法)が必要なわけです。税務当局も、納税者権利憲章(法)がないから、旧態然とした〝文化/カルチャー〟に縛られ、変われないでいるわけです。
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わが国には、民間機関がつくった優れた納税者権利憲章がたくさんあります。しかし、 国会・政府が制定・公けにした納税者権利憲章(法)はありません。

いまや民主主義の価値を大事にする諸国では、議会(国会)・政府が納税者権利憲章(法)を制定し、かつ、苦情処理機関を設けるのは当り前になっています。両者はセットで、いわば1枚のコインの表裏のような関係で運用されているわけです。

わが国にも、「納税者支援調整官」という国の税務に対する納税者の苦情を聴く税務当局が設けた仕組みがあります。しかし、税務当局が積極的PRしていないこともあり、その存在は余り知られていません。苦情申出手続も不透明で使い勝手が悪いのです。年次報告書もつくられておらず、活動実績も非公開です。まったくの密室行政で、市民・納税者が、活動実績を知るには、情報公開法を使わないといけないのです。納税者の苦情を聴く耳も小さ過ぎます。しかし、税務当局には自らの力でこの仕組みを刷新しようという意欲はないようです。

納税者支援調整官を、 国民・納税者に広く開かれた仕組みに急いで刷新しないといけません。これにより、わが国の「税務当局が主人公/主役」の〝文化/カルチャー〟を、「納税者が主人公/主役」、「納税者ファースト」に大きく変えないといけません。

刷新には、納税者の権利保護を任務とするアメリカの納税者権利擁護官制度や、お隣り韓国の納税者保護官、納税者保護担当官、納税者保護委員会などの仕組みに学ぶのも一案です。
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TCフォーラム/納税者権利憲章をつくる会は、「国会・政府が制定・公けにした納税者権利憲章(法)」の実現を目指し、1993年にできた組織です。TCフォーラムの納税者権利憲章(法)制定運動は、2010~11年の政権交代(民主党政権樹立)で、その目標達成寸前まで行きました。しかし、政権の変節で頓挫してしまいました。頓挫後もTCフォーラムは活動を続けてきました。しかし、数年前にこの組織の再生を依頼されたときには、「タコつぼ化」し、デジタル化時代にも後れを取り、古色蒼然としていました。

その後、TCフォーラムは、ホームページ(HP)を開設するなど、徐々に組織を刷新してきました。しかし、組織創設から30年はゆうに過ぎ、埋没感は否めません。

幸いにも、与党が過半数割れになりました。少数与党政権のもと、「政策協議」を通じた政策(議員立法)実現も夢ではなくなりました。しかも、「推し活」政治、SNS民主主義の台頭で、既存の野党も、目に見える「成果/実利」が求められます。「言うだけ番長」ではいられなくなっています。

まさに今がチャンスです。TCフォーラムは、柔軟でしたたかな戦術が求められます。新たなロビイング(議員立法の陳情/政党・議員への働きかけ)戦術で、納税者権利憲章(法)案と納税者支援調整官の法定化案(国通法改正法案)を早期に実現したいと思います。

TCフォーラムは、納税者権利憲章(法)案と納税者支援調整官の法定化案(国通法改正法案)成立を、来る参院選での政策上の争点にしたいと思います。ロビイングのための分かりやすいシナリオの要望書をつくり、「憲章制定の目標を達成し、会の早期解散を目指す!」くらいの勢いで進もうと思います。できるだけ幅広い政党・議員にロビイングをしたいと思います。「言うだけ番長」を卒業し、「当たって砕ける!」くらいのスタンスで大胆にチャレンジしたいと思います。

納税者権利憲章をつくる会/TCフォーラムの活動に幅広いご支援をよろしくお願いします。