TCフォーラム研究報告2026年4号(2026年2月)

TCフォーラム研究報告2026年4号(2026年2月)
「食品消費税ゼロ」の意味
「ゼロ税率(0%課税/免税)」か、「非課税」か?

石村耕治(TCフォーラム共同代表/白鷗大学名誉教授)
益子良一(TCフォーラム共同代表/税理士)

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2026年2月8日の衆議院選挙を前に、主要政党は競うように「食料品消費税ゼロ」のスローガンを掲げました。争点を潰す意図も見られ、各党がポピュリズム色の強い減税方針へと流れました。 

しかし、この「ゼロ」が、「ゼロ税率(0%課税・免税)」なのか、「非課税」を意味するのかで正体不明です。政党トップが出演したTVの討論会でも、「ゼロ税率(0%課税/免税)」と「非課税」の違いが十分に理解されていないことが明らかになりました。また、新聞報道では「非課税」と判断する動きもあります。しかし、この問題で記者が十分な知見を持っていないと思われるケースも少なくありません。与党や財務省は、「非課税」扱いで、税収減というよりは、実質大増税を狙っているとの見方もあります。

この違いは、極めて大きいのにもかかわらず、各党の選挙公約からだけでは見えてきません。まさに「ゼロのからくり!」です。有権者自身によるファクトチェックも欠かせません。生活者や政治家も、専門的な知識がないままの感覚では、「ゼロ税率(0%で課税/免税)」より「非課税」の方が〝お得〟に感じるかも知れませんが・・・。実際は真逆です。食料品の「非課税」扱いは、逆進対策としての機能は期待できません。むしろ、使われ方次第では、〝増税の呼び水〟なる可能性すらあります。

「非課税」となると、事業者は仕入れ時に支払った消費税を控除できず、「損税」【事業者が仕入にかかった消費税を負担してしまう問題】を抱え込むことになります。価格転嫁が難しい零細事業者ほど負担が重くなるため、弱い立場の事業者にしわ寄せが集中します。医療機関が社会保険診療サービス「非課税」扱いによって高額機器などの購入時に仕入税額控除を受けられず、経営を圧迫している現状が、その典型例です。

消費者から見ると、「非課税」も「ゼロ税率(0%課税・免税)」も〝税がかからない〟という点では同じに見えます。しかし、「非課税」によって食料品販売事業者に発生した損税が価格に転嫁されれば、結果的に消費者が負担することになります。「非課税」扱いは、見かけ上は〝消費税がかからない〟であっても、実質的には〝増税の呼び水〟になるという指摘は、この点に基づいています。

また、食料品が「非課税」となれば、大規模農家で、大型機械や備品、肥料、農薬など多額の購入しないといけない事業者は、医療機関と同様の問題が生じる可能性があります。インボイス制度で負担が増している零細事業者にとっては、さらに厳しい状況となります。

このように、食料品に対する消費税「非課税」は真の意味での逆進対策にはなりません。事業者にも消費者にも望ましい制度とは言えません。一方「軽減税率」を採用すると、税制が「複雑」になります。事業者の損税を生まない「ゼロ税率(0%課税・免税)」の選択こそが、事業者にも生活者(消費者)にもベストな選択であると考えられます。

今回、石村耕治(TCフォーラム共同代表/白鷗大学名誉教授)と益子良一(TCフォーラム共同代表/税理士)に、キャッチボール形式で、緊急に問題点を深掘りしていただきました。

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