TCフォーラム研究報告2023年4号(2023年6月20公表)

TCフォーラム研究報告2023年4号【2023年6月20日公表

わが国インボイス制度のカラクリ
「インボイス+帳簿の保存」は国際基準として通用するのか?

石村耕治(TCフォーラム共同代表・白鷗大学名誉教授)

消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)が、2023(令和5)年10月1日からはじまる。そもそも、インボイス制度への転換は、零細の免税事業者の益税対策がねらいである。ある意味では、零細事業者を狙い撃ちした増税である。増税額は、2,840億円にもなると見積もられている。

インボイス制度の問題の発端は、免税事業者は、インボイスを発行できないから、商取引からはじかれる。課税事業者にならないと、簡易課税の選択もできない。だから、はやく課税事業者になれ!というふれこみにあった。ところが、政府・財税当局は、インボイス制度開始が迫るなか、「激変緩和措置」を打ち出してきた。

そもそも、インボイス制度の導入は、消費税額計算において、複数税率に対応する手続の煩雑さを避けるためにインボイスを使えば簡潔に仕入税額控除(前段階控除)ができるメリットがあるということであった。ところが、インボイス制度に変更されても、「帳簿の保存」が不要になるわけではない。仕入税額控除するには、これまでどおり「帳簿の保存」も必要になる。これでは、インボイス制度に移行しても帳簿方式とほとんど変わらない。むしろ、零細事業者には、事業者登録しても、増税/納税事務の増大のデメリットだけが襲い掛かってくる。

欧米諸国では久しく消費型付加価値税における前段階控除/仕入税額控除にインボイス制度を採用してきた。ここでは、仕入税額控除権(the right to deduct input tax)を積極的に法認し、消費税額計算においてインボイスを紛失した場合などにも積極的に仕入税額控除を認める方向にあるようだ。

そもそも、わが国の仕入税額控除における「インボイス+帳簿の保存」ルールは国際基準として通用するのであろうか?世界的にも特異なわが国インボイス制度のカラクリについて、海外のインボイス制度にも詳しい石村耕治TCフォーラム共同代表にコメントをいただいた。