運動の原点に立つ
弁護士・TCフォーラム代表委員 鶴見祐策
28年前になる。私は、アメリカ・カナダ税制視察団(全商連主催)の一員に加えてもらった。その報告書(「納税者権利憲章の制定をめざして」)が今机の上にある。表紙にアメリカ連邦議事堂に展示の「大憲章(マグナカルタ)」のレリーフが載っている。そのページを繰っていると、北米大陸における納税者の権利の実態に新鮮な感銘を覚えつつ、我が国における後進性を思い知らされた記憶がよみがえってくる。
訪問先の税務署では、いたるところに「あなたの権利(Your Right)」が掲げられ、何ヵ国語にも翻訳された説明用のパンフが置かれていた。そのパンフには「職員から公正、迅速、丁重に扱われる権利」が謳われ、「あなたの権利を保護し、それにより租税制度の完全性、効率性、公正に対する高い信頼を得る」のが目標であると書かれている。
その2年後になる。「納税者の権利憲章」の実現を目指した「TCフォーラム」が結成された。世界標準である先進国の「常識」を日本に根づかせ確立させるためである。納税者の権利は、法制度の在り方によってその国における国民主権の成熟度の度合いを計りうる標識といえるだろう。私たちは課せられた事業の完遂に向けてさらに力を尽くしたいと思う。
税理士 TCフォーラム代表委員 益子良一
TCフォ-ラムの今までの活動を紹介しますと、納税者の権利憲章制定をめざして1994年4月に「納税者権利基本法要綱案」と「税務行政手続法要綱案」を発表しました。2002年7月には、民主党、日本共産党及び社民党の野党3党討議決定を経て共同提案し、会期切れで廃案とはなりましたが、「税務行政における国民の権利利益の保護に資するための国税通則法の一部を改正する法律案」の策定に深く関わっています。 民主党政権下の2011年11月30日、国税通則法が改正され税務調査手続きが法制化されました。国税通則法は2013年1月1日から施行されていますが、その税務調査手続きの法制化に当たっては、TCフォ-ラムの活動が大きく影響していると考えます。
TCフォ-ラムは、第12回定期総会(2004年5月15日)の記念講演で、アメリカ納税者ユニオン(National Taxpayers Union、以下「NTU」という)副会長ピ-タ・セップ(Pete J. Sepp)氏を招聘し、「アメリカにおける納税者権利保障法制定の経緯と現状-日本における納税者権利憲章の必要性-」と題した記念講演会を行っています。
セップ氏は講演の中で、「アメリカでも、徴税機関である内国歳入庁の行政権力は巨大であり、第一次納税者権利保障法制定に至る過程は平坦ではなかった」と述べ、アメリカの納税者権利保障法は、1988年12月の第一次納税者権利保障法から、1996年7月の第二次納税者権利保障法を経て、1998年7月に第三次納税者権利保障法、別名、内国歳入庁再編改革法に至っていると講演したことが印象に残っています。
日本でも国税通則法の改正により税務調査の手続規定は明確になりましたが、税務調査の現場では様々な問題が起きており、まだまだ不十分な状況で再度の改正に向けた運動が必要です。
私は代表委員として、国税通則法第1条に「国民の税に関する権利利益の保護を図る」旨を明記するなど、新たな国税通則法の改正に向けて頑張りたいと思います。
白鷗大学名誉教授 TCフォーラム代表委員 石村耕治
課税庁が納税者を「お客さま」として丁重に扱うのは、世界の常識になってきました。世界的に、税金を取る手続の適正化、透明化のための改革ラッシュが続いています。この背景には、税金を取る際の「納税者の権利保護」が久しく後回しにされてきたことへの反省があります。 多くの国々で、議会が納税者の権利保護のための法改正を積極的にすすめるとともに、課税庁がお客さまである納税者に接する際の「納税者サービス・スタンダード」を明文で宣言してきています。名称は、「納税者憲章(Taxpayer’s Charter)」、「納税者の権利宣言(Declaration of Taxpayers Rights)」、「納税者としてのあなたの権利(Your Rights as a Taxpayer)」などさまざまです。
わが国でも、課税庁が、納税者本位のお客さまサービスを徹底することは待ったなしです。国会や地方議会は、憲法に盛られた納税者の権利を保護するための積極的な対応をしなければなりません。また、国はもちろんのこと、各自治体も納税者権利憲章を制定し、憲法に盛られた納税者の権利保護を確かなものにしなければなりません。
TCフォーラムは、税金を取る際の世界の常識をわが国に根付かせるために、納税者・市民の英知を結集し積極的に活動してまいります。