TCフォーラム研究報告2026年7号

TCフォーラム2026年7号 石村耕治「『子ども・子育て支援金制度』を深掘りする」
                                 2026年4月1日
  26年4月にスタートした

「子ども・子育て支援金制度」を深掘りする

「独身税」導入による“ステルス増税”か? 問われる「支援金」という言葉選びのカラクリ

 進むステルス増税、「食料品消費税ゼロ」の闇

 

 石 村 耕 治
(TCフォーラム代表委員・白鷗大学名誉教授)

 

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2026年4月から政府の「子ども・子育て支援金制度」がスタートした。これは岸田政権が掲げた「異次元の少子化対策」に基づく制度である。理念は“子育て世帯を社会全体で支える”というものだ。この方針の下で、子育て世帯に支援金を給付(支給)する仕組みがつくられた。支援金の活用メニューは幅広い。子育て世帯を多面的に支えるために、次の6つのプログラムが用意されている。

児童手当➡拡充、②育児時短就業給付➡賃金の10%支給、③育児期間中の国民保険料➡子が1歳まで免除、④妊婦のための支援給付➡10万円相当、⑤出生後休業支援給付➡夫婦の育休支援で手取り10割相当、⑥こども誰でも通園制度➡乳児等通園支援事業で月10時間まで利用可能。

給付(支給)を受ける側から見れば「支援金」だが、負担する側からすれば「支援納付金」にほかならない。制度設計を担った役人は財源確保にあたり、負担する側からの反発の大きい「税」方式を避けた。代わりに公的医療保険の保険料(医療保険料)に上乗せする形で新たな「納付金/負担金」を徴収する道を選んだ。

年収によって差はあるが、2026(令和8)年度の平均では、健保保険の会社員は1人あたり月額平均約550円の負担をする。ただし扶養家族からは徴収しない。年収が多いと高くなる。例えば年収699万円の会社員なら、毎月575円が天引徴収される計算になる。自営業者らが入る市町村の国民健康保険では1世帯約300円、後期高齢者医療制度では1人約200円の負担となる。制度全体では、国民から年間約6千億円を集める計画である。

政府は、昨今の反増税・反社会保険料増徴のポピュリズム政治の流れを強く意識している。当初から、子育て支援金(支援納付金)導入による「実質的な負担は生じない」と説いてきた。社会保障の歳出改革などにより負担が相殺されるからだという。しかし、どう見ても、巧妙なカラクリである。給付(支給)対象は子育て世帯だけに限られる。子どものいない世帯にはまったく給付(支給)はない。負担(納付)だけである。子育て支援金(支援納付金)は、実質「独身税」で、ステルス増税との批判はあたっている。

もう1つのカラクリがある。「食料品消費税ゼロ」の政治公約が意味不明でいつ実施になるのかもわからないのである。消費者から見ると、「ゼロ」は、非課税でもゼロ税率(免税/0%で課税)でも、どちらも消費税がかからない点は同じに見える。しかし、事業者にとっては決定的に違う。ゼロ税率(免税/0%で課税)なら仕入れ時に払った消費税を控除できる。一方、非課税では仕入れ時に払った消費税の控除ができない。その分が「損税」となり、事業者の負担として積み上がる。この負担を避けようとすれば価格へ上乗せせざるを得ず、最終的には消費者が負担することにつながる。とりわけ、インボイス制度で事務負担が重く、価格転嫁が難しい零細事業者にとっては深刻である。損税が積み重なれば、事業の継続そのものが危うくなる。これが「消費税ゼロ」の“カラクリ”である。

議論は、国会ではなく、役人が背後で仕切る「社会保障国民会議」のような国民には見えにくい場に委ねられた。明らかに火消しを狙った時間稼ぎにも映る。巨大与党の誕生で存在感が薄くなった右寄りの弱小野党までもが、この役人主導の大政翼賛会に集まりだした。これでは、議会制民主主義や財政民主主義が崩壊する。与党は、衆院で絶対多数を占めるのだから、首相が決断すれば、公約はすぐにも実行できるはずだ。消費税減税はヤル気がないのではないか?

トランプ政権のイラン攻撃で、石油危機、円安でインフレ悪化は必至だ。それにもかかわらず、子育て支援金(支援納付金)導入によるステルス増税は進み、消費税減税は闇のなかに置き去りにされている。こうした不透明で優柔不断な政策運営は、為政者には常套手段なのかもしれない。しかし、国民の政治不信をさらに深めるだけではないか?

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