TCフォーラム研究報告2026年2号(2026年1月)
TCフォーラム研究報告2026年2号(2026年1月)
ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)が拓く未来
~給付(還付)つき税額控除/勤労所得税額控除(RTC/EITC)
を超えてアメリカの実情を深掘りする!~
石村耕治(TCフォーラム共同代表/白鷗大学名誉教授)
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《UBIが拓く未来、RTC/EITCを超えて》
・給付(還付)つき税額控除を採り入れた勤労所得税額控除(RTC/EITC)は、税制と社会保障・福祉の統合/一本化して導入されたセーフティネットです。
・アメリカでは、連邦や州レベルで広く導入されている。RTC/EITCは、勤労を通じた所得支援を基本理念としています。しかし、その適用条件や控除額の算定方法は極めて複雑です。しかも制度改正が頻繁に行われます。このため、一般の納税者はもちろん、税務の専門家にとっても制度の正確な理解と運用は容易ではありません。
・とりわけ 給付(還付)つき税額控除(RTC/EITC)では、労働能力や就労意欲、金融所得、家族構成といった属性や、所得に応じて控除額が段階的に増減するフェーズイン/フェーズアウト方式のような複雑な仕組みを採用します。結果、税制における「簡素」という理念からは大きくかけはなれているのが実情です。
・給付(還付)つき税額控除(RTC/EITC)は、税制を使って給付(還付)するという仕組みです。税務当局が給付の可否を一手に握る制度には、懸念や反発の声も少なくありません。事実、課税庁による税務調査のターゲット、餌食になるのは、税務専門職に護られた富裕層よりも、「働いても生活が苦しい人たち(ワーキングプア)」が多いのが実情です。
・今日では、むしろ税制と社会保障・福祉を別建て/切り離すことで、より安心できるセーフティネットの構築につながるという声が強くなっています。
・こうした声が大きくなるのには、先端テクノロジーの急激な社会への浸透という別の背景もあります。
・デジタルトランスフォーメーション(DX)や自動化、生成AI、フィジカルAI・ロボティクス、アバターといった先端テクノロジーが社会に浸透する時代にあって、「労働によって所得を得る」という従来の価値観そのものが変容しつつあります。こうした技術革新は、人間の働き方や役割を再定義し、所得分配や社会保障・福祉の枠組みにも抜本的な見直しを迫っています。先端テクノロジーによる雇用喪失にも対応できる新たなセーフティネット構築の必要性です。
・このような時代背景のなかで、すべての人に無条件で一定額を支給するユニバーサル・ベーシックインカム(UBI=universal income tax)のような制度が注目を集めています。UBIは、「普遍的基礎所得」、「最低所得保障制度」などと邦訳されます。
・UBI(普遍的基礎所得」、最低所得保障制度)は、制度の簡素、行政コストの削減といった観点からも、給付(還付)つき税額控除(RTC/EITC)のような選別的・条件付きの支援策に代わる新たな社会保障の選択肢として浮上しています。この背景には、受給者の労働能力や就労意欲の有無などを前提とする給付(還付)つき税額控除(RTC/EITC)が果たして持続可能な制度であり続けられるのかについての懸念です。給付(還付)つき税額控除(RTC/EITC)は「時代遅れ」との評価を受ける場面も増えています。
・こうした時代の転換点あって、わが国では、依然として受給者の労働能力や就労意欲の有無などを前提とする給付(還付)つき税額控除(RTC/EITC)の導入を主張し続ける政治勢力が主流を占めます。政策的な視野の狭さを露呈していると言わざるをえません。
・とりわけ、最近、各政党が集団主義的に「給付(還付)つき税額控除万歳!」の〝お経〟を唱えだしています。しかし、アメリカ型のように税制と社会保障を統合/一体化した制度の導入は、いまや実情にそぐわないのではないでしょうか。もう少し厳しくいえば、時代に合わないどころか、むしろ無謀にすら映ります。少なくとも旗印を、未来志向の「UBI」に変えた方がよいでしょう。
・いずれにしろ、近年の急激な技術革新を考えると、「労働により所得を得る」という〝従来の価値観の変容〟に伴う次世代型の新たなセーフティネットの構築は急務です。
・TCフォーラム研究報告2026年2号では、「UBIが拓く未来、RTC/EITCを超えて」のキャッチで、アメリカの実情に焦点をあてて深掘りして見ます。
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