TCフォーラム研究報告2022年4号(2022年6月公表:8月改訂版)

TCフォーラム研究報告2022年4号【8月改定版】
「時機を得た自動物価調整税制導入」
~生活者向けの究極のインフレ税退治策~
インフレ税を放置しない! タックスインデクセーション導入のすすめ!!
石村耕治(TCフォ-ラム共同代表/白鷗大学名誉教授)

世界の懸念は、コロナ禍からインフレへ大きくシフトしている。庶民の生活を犠牲にし、インフレを放置すれば、税収が自然増加し、国の借金の解消につながる。こうした政策の継続は、生活者、とりわけ低所得者や年金生活者を窮地に陥れる。だが、与党は、インフレを放置し、所得減税も消費減税も口にしない。野党も、見せかけのインフレ税対策を掲げるが、その本気度が問われている。
インフレ税退治は、大きく所得課税と消費課税の面から検討できる。
憲法上、納税義務の変更は法律の手続によることを求める。憲法84条は、「新たに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」と定めているからである。アメリカなどでは、「代表なければ課税なし(No Taxation without representation)」という。このことから、物価上昇により納税義務を増加し~現行の租税が変更され~当該納税者の実質所得が減少する場合、それが国会の議決を経ずに行われることになるとすると、租税法律主義の形式主義的な要請にふれることになる。
国庫が赤字財政下にあり税収が必要であるとしても、租税法律主義が支配する憲法構造のもとでは、政府は「隠れたインフレ増税」によるべきではない。納税者にその理由を明らかにし、国会の議決という「投票による増税」を行うように求められる。インフレ増税ではなく、この正規の「投票による増税」は、「物価中立所得税制」の確立、すなわちタックスインデクセーション/自動物価調整税制も導入によって確保できるのではないか。世界の多くの諸国では、すでにタックスインデクセーション/自動物価調整税制を導入している。もう導入の是非について不毛の議論をしている段階ではない。
カナダでは、1974課税年から連邦個人所得税にタックスインデクセーション/自動物価調整税制を導入した。アメリカでは、当初、所得税制を導入する州でタックスインデクセーション/自動物価調整税制を導入した。連邦は、1981に税制改正で個人所得税制にタックスインデクセーション/自動物価調整税制を導入し、1985年に実施した。
アメリカ連邦の個人所得税では、前年分の所得または還付につき翌年4月15日までに確定申告をする仕組みになっている。例えば2022暦年分については、23年4月15日が申告期限になる。連邦財務省やその外局にある内国歳入庁(IRS=Internal Revenue Service)は、毎年、納税者が前年分のインフレ率(CPI)を翌年分の所得税の計算・申告に反映できるように、調整項目にかかる数値を公表する。
2022暦年分について、IRSは、2021年11月10日に、レベニュープロシージャ―20-21-45で、62項目にわたるインフレ調整金額を公表している。項目一覧に目を通すと、インフレ調整は税率表や各種人的控除項目など幅広い項目にわたる。インフレにより税負担が増大しないようにきめ細かな対応をしていることがわかる。
このように、タックスインデクセーション/自動物価調整税制は、カナダやアメリカ、イギリスなど多くの市場主義を貫く諸国で、すでに着実に軌道に乗っている。
政治は、こうした先進各国での導入実績に目をつむり、行政のいいなりで、座して給料取りに徹していてはならない。生活者が政治に求めていることを「実行」しないといけない。急いで恒久的なインフレ税退治のタックスインデクセーション/自動物価調整税制実現のための税制改革を実現しないといけない。
実は、わが国でも、1981(昭和56)年に、当時の日本社会党が、「所得税の物価調整制度に関する法律案」が議員立法(堀昌雄ほか8名)をし、衆議院に提出している。
ということは、まさに「トライ・イット・アゲイン」である。政治は、再度チャレンジし、もっと磨かれた内容の議員立法を提案し、流れを変え、国民・納税者に少し恩返しをしてはどうか。先人の英知に学び、恒久的なインフレ税退治のためのタックスインデクセーション/物価自動調整税制の導入を、議院立法で是非とも実現して欲しい。加えて、消費税のインフレ税対策の実現も急がなければならない。税率引下げや消費税廃止も一案である。しかし、ゼロ税率の適用/採用も一案ではないか。「損税」対策にも資するからである。
わが国では、ゼロ税率を意図的に「輸出免税」と名付けている。しかし、とりわけイギリスやオーストラリア、カナダなど旧英国領諸国では、このゼロ税率を、「国内ゼロ税率」と名付けて、医療サービスや教育、さらには 生活必需品・サービスなどにも幅広く採用している。野菜や食料品、上下水道・ガス・電気などのサービスにゼロ税率が適用されれば、消費者はインフレになっても消費税負担は増えない。生活者は「インフレ税」をしっかり回避できる。また、売上げにゼロ%で課税されることから、事業者は仕入れにかかった税額の還付を求めることができる。こうしたことから、消費税については「廃止」ではなく、「生活必需品やサービスなどにゼロ税率(国内ゼロ税率)の採用/適用」を提案するのも一案である。
消費税への「国内ゼロ税率の採用/適用」を求めることには、財政当局が強い抵抗を示すかも知れない。しかし、消費税「廃止」よりは容易なのではないか?野党には、もう少し洗練された提案をして欲しいと願っている。学びが不足しているようにも見える。

ゼロ税率の効用については、本稿末に添付した以下のコラムを参照されたい。
【コラム】消費税減税、廃止も一案だが、「ゼロ税率」のもっと賢い使い方も学んでおこう!!